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TIME'S I・II/安藤忠雄

Time's Building - Tadao Ando
TIME'S Building 1984 / Tadao Ando Tadao Ando | Gallery | Lecture Meeting
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京都市内を南北に流れる鴨川から三条通りを西へ100メートル、高瀬川に面したタイムズビル。

建物は川沿いの護岸を一部切り取り、水面に20センチまで近づけたテラスを有する。
150坪に満たない間口の狭いうなぎの寝床的な敷地にありながら、街に開かれ通りから直接アクセスできる水際空間を建物の「顔」として、人々を誘う。

高瀬川に開かれたTIME'S。周囲の切妻の瓦屋根が並ぶ街並みと対象的にアールの付いた屋根が連続する。
敷地南側の狭い通路を抜けると京都らしい街並みの龍馬通へと繋がる。
水辺の涼しさを感じられるテラスは憩いの場所。周囲の喧騒が嘘のように川のせせらぎがよく聞こえる。

建物の大きな特徴である水際テラスの実現には、法的なハードルに加え増水時のリスクなど維持管理の難しさから行政のみならずクライアントからも反発を受けることとなる。
計画実現のため行政との交渉を続け、クライアントを説得しこの魅力的な建築が実現した。

行政の懸念は転落事故が起こった場合の許認可者としての責任問題であったようだ。水深10センチ程度の水路に対して過度なリスクヘッジではあるが行政としては致し方ない理由であり、それを覆す安藤氏の交渉力には頭が下がる。

手摺もなく水面から20センチ程度の高さしかないテラス。三条小橋から階段でテラスへ直接アクセスできる。

建物内部は小さな階段と渡り廊下が立体的に交差し、複数の中庭を有する秘密基地のような空間。半屋外の通路(庇のない区間もある)が部屋ごとの動線となっている。
馬目地に巡らされたコンクリートブロックと鉄とガラスの洗練された構成は、昭和59年に竣工したビルの内部だとは到底思えない。

小さな階段と通路が立体的に交差し、複雑に入り組んだ内部空間。光を取り込む吹き抜けや中庭が効果的に配置されている。

1期竣工後、南側敷地のオーナーに安藤氏自ら計画を持ち込み2期区間を実現。
しかし複雑な構造が仇となったのか、テラス沿いや三条通り沿いの区画以外のテナント稼働は低調で、ここ数年は全ての店子が退去。テラスを含めた建物全体が閉鎖されてしまっている。

街の有する自然を引き込み、それを味方につけて環境を組み上げる見事な建築であり、三条小橋の通行人がつい目を向けてしまう魅力的な建物であるが、テナントビルとして商業的に成功したとは言えない。
複雑な内部空間だけではなく、家賃設定や使用用途の制限、計画者の理念と市民の建築や自然との共生に対する感覚のズレも理由の一つではあるが、竣工から40年、建物は存続の危機に瀕している。

タイムスビルはインバウンド需要に湧く先斗町に隣接しており、木屋町の風情たっぷりな情景も相まって非常に魅力的な立地にある。
竣工後40年を経過した今日においても、この建築は時代に埋没してしまうようなものではない。界隈の賑わいを取り込めるようなホテルや飲食街などへの大胆な転換で、建築の魅力によって商業的な成功を収めることを切に願う。

平面図
PAGE INFO
公開日: 2007/7/30 撮影: 2024/5 | 2007/7

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