
EXPO2025 Dialogue Theater–いのちのあかし– -河瀨直美
Dialogue Theater–sign of life– - Naomi Kawase
未来的な建築や独創的なデザインが並ぶ大阪・関西万博のシグネチャーゾーンに、どこか懐かしい木造校舎が立つ。
奈良県と京都府の二つの木造廃校舎を可能な限り再利用し、三棟のパビリオンへと再構築。歴史の痕跡をあえて残しながら、新しい材やコンクリート、ガラスを重ねて「時間を積み重ねる建築」を目指す。総合プロデュースは映画監督・河瀨直美氏、建築設計は周防貴之氏。



パビリオンは3棟の構成。

静けさの森に隣接する敷地は里山を再現した自然あふれる景観。
建物は、奈良・十津川村の旧折立中学校(南棟1952/北棟1958)と、京都・福知山市の旧細見小学校 中出分校(1930)の木造校舎を丁寧に解体→選別→再構築して、エントランス棟/対話シアター棟/森の集会所という三つの建物に生まれ変わらせた。単なる移築の再現ではなく、瓦や板張り、柱梁に残るキズや落書きといった時間の痕跡をあえて露出させ、新設のコンクリートやガラスと重ね合わせることで、古材と新材の取り合いを露出し、両者の共存を空間で示している。
施工は釘一本から手作業で外す再利用前提の解体と補修・組立を徹底し、旧材と新材の取り合い・法規適合を解いた“循環型の作法”が随所に表れる。




古材と新材の接合や仕上げを開示し、構法の共存を視覚化している。
屋外のランドスケープは敷地中央のイチョウの大木(推定樹齢100年)を核に、奈良・京都の里山の記憶を抱えた植物を養生・移植し、「いのちの草原/いのちの木立/いのちの泉」という3つの場を編成。記憶の継承と再生を建築と景観の両面で表現している。





圧巻のイチョウの巨木を中心に里山を再現した憩いの空間。
シグネチャーパビリオン「Dialogue Theater–いのちのあかし」は、敷地内や西側の棟(森の集会所)は自由に観覧可能。移築により古材と新材が交差する質感を、誰でも体感できる稀有な場だ。会期後は再移設も予定され、建築は次の土地で新たな記憶を静かに重ね続ける。

再現された里山とともに自由に内外を観覧できる森の集会所棟。
PAGE INFO
公開日: 2025/9/14
撮影: 2025/4,5
作成者: Hiromitsu Morimoto