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EXPO2025 日本館 - 佐藤オオキ(nendo)/日建設計

Japan pavilion Oki Sato [nendo] - Nikken Sekkei
Japan Pavilion 2025 - Nikken EXPO2025
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大阪・関西万博、開催国である日本のパビリオン。
敷地約13,000㎡は万博内最大の面積を誇る。
総合プロデュースはnendoの佐藤オオキ氏、建築設計は日建設計。

大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を開催国としてプレゼンテーションする拠点として、当該テーマの具現化や日本の取り組みを発信。「いのちと、いのちの、あいだに」をテーマに、会場内の生ゴミを利用したバイオガス発電をはじめ、日本の先端的な技術を活用し、一つの循環を創出、持続可能な社会に向けた来場者の行動変容を促す。

建築は、280組560枚の国産杉材を用いたCLT(直交集成板)が雁行しながら円環状に連なり、「いのちのリレー」や「いのちの循環」といったコンセプトを表現している。
CLTは構造耐力を備えた内外壁として機能し、CLTの間にはサッシを用いず縦長の大判ガラスを直接はめ込むことで、繊細なディテールと視覚的な抜け感を生み出し、内部の様子を外部からも垣間見ることができる設計になっている。

また、会期終了後に日本各地でリユースされることを前提に、解体・再組立が容易で、部材に傷をつけにくい構造を採用。展示と建築が一体となり、循環というテーマを体現した。

大屋根リングから日本感を見下ろす。CLTが円環状に並ぶ。
CLT間に大判ガラスが直接はめ込まれた。

建物は、1階にバイオガスプラントを含む機械設備工場等を配置し、2階レベルの展示鑑賞空間から吹き抜けを介してプラントや設備の稼働している様子を見ることが出来る構成。
展示エリアは展示計画に応じ3つのゾーンに分けられ、その外側に屋外回廊を設置。回遊性を持たせた構成になっている。

CLTに囲まれた屋外回廊。上部のアルミ製のルーバーは日除け用。

ファームエリア |「水」から「素材」へ
Farm Areaは、微生物が生ごみを分解し水やCO2を素材へと変える、分解と生産の「あいだ」の世界。見えない生命がものづくりのかたちとなって現れる場。チューブの中で藻がぐんぐん育つ未来の森や、藻になった「ハローキティ」の展示が楽しめる。

「フォトバイオリアクター」と呼ばれる緑のチューブの中では、食用にもなるスピルリナという藍藻類の仲間が育つ。藻になったキティちゃんは全部で32種。

ファクトリーエリア |「素材」から「もの」へ
Factory Areaは、ごみから再生された素材が生活の道具へと生まれ変わる場所。日本文化に根づく「ものを大切に使う知恵」と技術、そして循環の思想が受け継がれていく様子を展示。「もの」が生まれ、「ひと」の手によってかたちを変えながら受け継がれていくことも、いのちと同じ「循環」の一部であることを体現している。
未来の製造工場の展示をはじめ、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」の大気圏再突入カプセルや、小惑星イトカワ・リュウグウから採取された「砂」の展示、さらに式年遷宮や上津屋橋、焼杉、日本館解体後の再利用などに関する建築展示、桶・竹・着物といった日本の伝統技術に関する展示も体験できる。

ファームエリアで育てられてた藻類を原料に加えた植物由来プラスチックを原料に、日本館の中で使われるプロダクトを製造。撮影時は日本館スツールがロボットアームにより3Dプリントされていた。
古くから日本家屋に使われてきた焼杉。炭化することで腐食を抑える。ドラえもんも焼き付けられている。

プラントエリア |「ごみ」から「水」へ
Plant Areaの主役は肉眼では見られない微生物。そのはたらきそのものが展示物。会場で出たごみが微生物の力で分解され、電気やきれいな水に生まれ変わる。小さないのちが支える循環の仕組みから、未来の循環型社会を体感できる。
会場全体から出たごみを微生物が分解する過程をBE@RBRICK(ベアブリック)で表現した展示や、「生分解性プラスチック」の器、南極で発見された火星の隕石などを紹介。 また、微生物の発酵作用を無数の光で表現した「光の草原」や、微生物の力で純水に近いレベルまで浄化された水をたたえる巨大な水盤のある中庭など、見どころの多いエリア。

光の草原と円形の中庭に現れる光をたたえた巨大な水盤。
火星の石

バイオガスプラント | ごみを食べるパビリオン
3つのエリアを見終えると日本館のプログラムは終了となるが、敷地外へと至る屋外回廊にはプラントエリアでBE@RBRICKを用いて表現されていた、会場内の生ゴミを微生物が分解するプラントを実際に目にすることができる。微生物によるゴミの分解で生成されたバイオガスを使って電気を生み出し、排水は館内で浄化され中庭の水盤に送られる。

バイオガスプラント

日本館は人やモノをはじめ、あらゆるものが一つの役割を終え、何かが受け継がれ、形を変えながら役割を獲得する「循環」というテーマを、独創的なアイデアや日本を代表する人気キャラクターを用い体現したパビリオン。
国産杉が円環状に連なる建築も、「入口と出口」「表と裏」「内と外」を分けず、それぞれが融合し、はじまりも終わりも存在しない姿を体現し、会期終了後には、建物そのものが次のいのちへと循環していく計画。

「社会全体で取り組むべき課題」といった押し付けがましい提案や一方的な答えを示すのではなく、来館者が複雑な循環の仕組みを理解し、自発的な行動変容へとつながるきっかけを提供するこのアプローチは、多くの人に好感を持たれるのではないだろうか。

PAGE INFO
公開日: 2025/6/15 撮影: 2025/5 | 2025/4

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