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EXPO2025 パソナネイチャーバース/板坂諭

PASONA NATUREVERSE - Satoshi Itasaka
Pasona NATUREVERSE 2025 - Satoshi Itasaka EXPO2025
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大阪・関西万博、西ゲートゾーンに建つ「PASONA NATUREVERSE(パソナ ネイチャーバース)」。
エグゼクティブプロデューサーに医学博士で心筋再生医療の第一人者、澤芳樹氏を迎え、最先端医療技術「iPS心臓」をはじめ、未来の医療や生命の歴史を届けるパビリオン。
建築設計はthe design laboの板坂諭氏。

建物は、巻き貝を模したエントランス棟と、アンモナイトを思わせる螺旋状の展示棟の二棟で構成される。
エントランスの先端にはパビリオンナビゲーターの鉄腕アトムが腰掛け、来場者を迎える。
外観は複雑な鉄骨架構を薄いピンクの膜材が包む有機的なシルエットが特徴。この膜材は徐々に褪色し、最終的には真っ白に変化する計画。

薄ピンクの膜材で覆われた外観。巻貝先端に鎮座するアトムが指差すのはパソナグループの拠点がある淡路島。

半年の万博期間で建物を使い捨てにするのは環境負荷の面で問題がある。そこでボールジョイントによるシステムトラスを採用し、解体・移設を容易にする仕組みとした。
また、外装の膜材は軽量で撤去もしやすい一方、熱が内部へ伝わりやすいという課題がある。このためアンモナイトの稜線に散水用ホースを巡らせて水を放出し、室温を下げている。さらに、散水は海風に乗って地表へ運ばれ、気泡の多いホタテ貝殻の廃材を混合した多孔質の路盤材が吸水・蒸発を促すことで、気化熱により周辺の気温も下げる。

ボールジョイントによるトラス構造は、展示室出口付近で確認することが出来る。
螺旋状の展示棟の稜線に留められた散水用ホースが見える。滴下した水は足元のピンクがかった小礫層に染み込み、蒸発過程で周囲の気温を下げる。

いのちの象徴であるアンモナイトの螺旋をモチーフにしたパビリオンは、「いのちの歴史」「からだ」「こころ・きずな」の3ゾーンで構成される。まず入口では、太陽の塔内部の「生命の樹」へのオマージュである「生命進化の樹」が来館者を迎える。幹の地層が進化の歩みを、地下へ伸びる根が深い過去を、枝が未来の可能性を示し、樹上の窓からは未来の地球を垣間見せる。人間の潜在力、自然の偉大さ、進化のダイナミズムを体感させ、期待を高める構成だ。 さらに、アンモナイト由来の虹色宝石「アンモライト」、遠隔手術を想定した「空飛ぶ手術室」、最適な睡眠を探る未来のベッド、iPS心筋シートや生体材料・バイオエンジニアリングによる「iPS心臓」などを通じ、生命の歴史から最先端医療技術までを横断的に提示する見どころが並ぶ。

生命進化の樹。
iPS心臓の展示。
ブラック・ジャックの執刀により「iPS 心臓」が装備されたネオアトムのショートムービー。

合理的で複雑な生命の螺旋構造を確かな技術で具現化し、被膜で覆うことにより、有機的で独創的な建築が生まれた。
化石から最先端技術まで、生命の可能性について多角的に体感できる、大人から子供まで知見を得られるパビリオンだった。

PAGE INFO
公開日: 2025/7/31 撮影: 2025/4,5

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