
オーストリアパビリオン
Austria Pavilion
五線譜と音符を刻んだ独創的な木製スパイラルが象徴の、音楽の国、オーストリアのパビリオン。「未来を作曲(Composing the Future)」をテーマに、音楽と木造建築を融合させた。
設計はウィーンを拠点とするBWMデザイン&アーキテクツ。

建物外観。スパイラルに目を奪われるが、建物本体は写真左奥の赤褐色の箱。
建物は前庭にそびえる木製スパイラルが、展示棟を取り囲む外部階段として機能する。全長約91m、最高高さ16mのリボン状構造はビス接合のみで組み立てられ、会期後は解体・再利用が可能。
内側は五線譜となり、ベートーヴェン「歓喜の歌」冒頭小節が刻まれる。
来場者はこのスパイラル階段を上り、2階のカフェや最上部の展望デッキへと至る。
展示棟は鉄骨モジュール造で、単層の展示ホールを中心にオフィスやVIPラウンジを備える。

スパイラル内側の五線譜。


ビスによる施工で解体撤去も用意になる工夫が施されている。
内部展示は「関係/人/アイデア」の3章から構成され、終盤には来場者の入力に応じAIが音と映像を生成する「Cathedral of the Future」が広がる。自動演奏やウィーンのカフェ文化も体験でき、建築と音楽が一体化した空間となっている。サステナビリティ面ではPEFC認証材を活用し、木と鉄骨の融合による「未来を作曲する」建築を提示する。
人気のオーストリア館は入場規制が頻発し、内部体験のハードルは高い。一方で、外部階段として機能する木製スパイラルは自由に観覧でき、調和の広場を見下ろす屋上まで上がれる。日没後はライトアップでリボン状の木組みが浮かび上がり、陰影が強調された美しい姿を間近で見ることができる。建築を目的に訪れるなら、この屋外部分だけでも十分に満足度が高いパビリオンだ。


PAGE INFO
公開日: 2025/9/22
撮影: 2025/5,6,8
作成者: Hiromitsu Morimoto