
EXPO2025 ポルトガルパビリオン/隈研吾
Portugal Pavilion - Kengo Kuma
大阪・関西万博、東ゲートからリング下を南に進んだ先、大屋根リングへのエスカレーター脇に位置するポルトガル館。
吊りロープとリサイクル漁網が風と光に応じて揺らぎ、海のうねりを思わる外観は、エスカレーターを昇降する多くの来場者の視線を強く引き付ける。レストランやテイクアウトにも多くの人々が並ぶ人気パビリオン。



大屋根リングおよびエスカレータから見たポルトガル館。大きくくり抜かれたようなバルコニーはDJブースも備え、各種演奏やパフォーマンスが繰り広げられる、万博の名物の一つ。
建物は、鉄骨フレームをベースに、9,972本の吊りロープと漁網を組み合わせた軽量外装で"海の動勢"を表現。風・日射に応じて表情を変える。重く固定的な建築観から解放された「動きつづける、軽やかな建築」という設計コンセプトに基づくデザイン。
部材選定や接合計画は解体・再利用を前提に検討され、仮設建築としての環境負荷低減が意識されている。



独創的なファサードを形成するロープは9,972本におよぶ。


吊り下げられた無数のロープが美しい陰影を作る。ロープは風の影響や触れられたりでゆらゆらと揺れている。

屋根は海面が波立つ瞬間が切り取られたような形状。
展示は「海」を軸に過去→現在→未来をたどる物語的動線で構成され、プロローグからメイン展示、ショップや多目的スペースへと緩やかに連続する。吊りロープと漁網による外装の透過性が内部に柔らかな光を導き、空間体験を下支えする。"海は生命の対話の場"というメッセージは、映像・音・光のインタラクションによって体験化され、海洋の研究・産業・文化を横断するプログラムへと展開。テーマと動線計画、演出が有機的に結びついた展示となっている。



多面投影+ダイナミックライティング+360度空間音響によるイマーシブ映像空間で、海洋保全や"海との共生"の未来像を体感的に提示。


南蛮貿易など、日本とポルトガルの交流史や、ポルトガル由来の言葉・文化も数多く紹介されている。


屋内の展示スペースやショップにも吊りロープが。
ポルトガル館は、大航海時代の帆船に欠かせなかったロープを無数に吊り下げ、風と光の変化で揺れ・振動・透過を生み出すことで、形態ではなく感覚として「海」という動的な状態を体験させる空間をつくりあげた。
夢洲という海上の人工島に"海"を表現した本建築は、大阪・関西万博で4棟のパビリオンを手掛けた隈研吾氏の作品の中でも、一層際立つ存在となっている。

絵画的表現が特徴のタイル「アズレージョ」を用いたオブジェは記念撮影スポットとして人気。
PAGE INFO
公開日: 2025/8/2
撮影: 2025/4,5,6,7,8
作成者: Hiromitsu Morimoto