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EXPO2025 いのちの未来-石黒浩

Future of Life - Hiroshi Ishiguro
Future of Life 2024 EXPO2025
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黒いベールに包まれた外壁に水が流れ落ち、足元からミストが吹き出す。 「いのちの未来」はロボット工学者・石黒浩氏がプロデュースし、「いのち」をテーマに、水や光、ロボティクス、バーチャル技術を駆使した「シグネチャーパビリオン」。

建物はポリ塩化ビニールと炭素繊維のメッシュ膜によるカスケード型膜で覆われ、屋上からの水流と足元のミストによる"水のベール"をくぐり抜けて、人間とアンドロイドが共存する未来空間へ来場者を誘う。
このカスケード状の膜構造は、日射を和らげる遮熱効果や屋内外の視覚的緩衝を担うとともに、軽量で施工性に優れ、解体後の再利用も見据えた設計となっている。

水盤に流れ落ちる水とミストに包まれた建物。ラッパのような開口部がエントランス。

内部空間は円筒型「アンドロイドシアター」を中心に構成。
鉄骨造を基本としつつ、外装の自由曲面を成立させるために三次元モデリングと数値解析を駆使。
直径約10m、高さ最大17mの円筒形アンドロイドシアター"まほろば"では視界の連続性と音響効果を高めるため、柱配置や断面形状が精緻に調整されている。
外装膜には透過率や撥水性能が異なる複数の素材を組み合わせ、光や水の表情を時間帯や天候に応じて変化させ、内部には吸音性の高い木質パネルや再生樹脂材を用いて視覚・聴覚・触覚を刺激する多層的空間を構築している。
豊富な量の水流は海水淡水化と循環ろ過システムを併用し、水の消費を最小限に抑えるとともに、回収水によって熱負荷低減と湿度調整を実現した。

透過するメッシュ状の外装膜は水流が目隠しになる。

展示は、太古の昔から現代に至るまでに日本人がモノにいのちを宿してきた歴史の紹介から始まり、50年後の未来、1000年後の未来を10種のアンドロイドがナビゲーション。
映像作品や著名人のアンドロイド、アンドロイドと生身の人間の隔たりがなくなった進化した人間=ミレニアムヒューマンなど、多彩なアイデアと独自の世界観によって、没入感の高いパフォーマンスが繰り広げられる。

展示の主役は、人がいのちを宿したアンドロイドたち。ムービーも短編ながら「いのち」について心に訴えかける見ごたえのある作品。
ミレニアムヒューマンが来場者を迎える未来空間。周囲には有機的にうねる映像パネルが配置され、天井からは水や霧、光が織りなす演出が降り注ぐ。

いのちの未来は、リアルとバーチャル体験を通して「いのち」について考えるパビリオン。難解になりがちなテーマを、作り込まれたショートムービーや多彩なアンドロイドたち、そしてミレニアムヒューマンが来場者を迎える1000年後の未来空間で表現。
視覚・聴覚・触覚が一体となる多層的な演出で、人間の未来像とその可能性を幅広い年齢層が直感的に体験することができるパビリオンだった。

PAGE INFO
公開日: 2025/8/10 撮影: 2025/4,5,6,7,8

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