
EXPO2025 ルクセンブルクパビリオン/STDM+みかんぐみ
ヨーロッパの小国ルクセンブルクは、発達した金融業と、整備された交通インフラ、比較的低い法人税、そしてドイツ・フランス・ベルギーに囲まれた地の利を生かして多くの外国企業を誘致。タックス・ヘイヴン化および越境通勤者の影響もあるが、1人当たりGDP世界一を誇る。大阪・関西万博に出展するパビリオンでは、その豊かな自然環境と人々の暮らしを紹介する。
大屋根リングから俯瞰すると、軒を連ねるパビリオン群の中でも、幻想的にライトアップされた膜構造の屋根を戴くルクセンブルク館がひときわ目を引く。
設計はルクセンブルクの設計事務所STDMと日本のみかんぐみ。

計画は大屋根リングから俯瞰できる立地を活かし、見栄えの良い屋根を作ることを第一とした。
地盤の弱い人工島の建築であるため、素材は軽量な膜材を採用。
屋根の下には、13個の箱型の建築物を連結。箱のサイズは3.24mX3.24mから13.6mX9.61mまでの大小さまざまなボリュームのものを用途に合わせて配置。箱の中に展示場やオフィス、トイレを備え、箱と箱の間をぬうように庭園やフードコートが設置されている。
そのすべてを覆うような屋根部の軽量膜は、山のように尖った部分とくぼんだ部分が交互に連続し、ルクセンブルクの国旗と同じ赤・白・青の光がゆっくりと移り変わり、美しい陰影を生み出す。
膜は鉛直ケーブルのみで保たれており、箱型建築物の基礎となるコンクリートの「メガブロック」にしっかりと固定されている。




展示は「Doki Doki ときめくルクセンブルク」をテーマに3つ部屋で構成され、ルクセンブルクの人々の生活やサステナビリティの取り組み、美しい国土の風景が紹介される。





建物は万博閉幕後を見据えた循環型設計として計画されており、従来のコンクリートに比べて組み立て・解体が容易なメガブロックによる基礎構造や外装材に転用した型枠パネル、再利用可能な軽量鉄骨、再加工可能な膜材など、加工を最小限に抑えながら解体や再使用もスムーズに行える工夫が施されている。



ルクセンブルク館は夜の大屋根リングから見える美しい屋根により、多くの人々を誘い、期待を高めて訪れた来場者を満足させる魅力的なパビリオンであるだけではなく、循環型の仮設建築としてあらゆる工夫を施し、さらに秀逸なデザインを誇る秀でた傑作だった。
作成者: Hiromitsu Morimoto