
EXPO2025 ネパールパビリオン
開幕から3か月後に公開されたネパール館。入退場自由の地上階の中庭には飲食と物販が集まり、カトマンズの屋台街のよう。ダルバートやビリヤニ、ネパールビール、スイーツまで、ネパールの食文化を体感できる。


建築は簡素な鉄骨フレームに伝統装飾を重ね、短工期・低コストと文化的表現の両立。1階に飲食と物販、2階に展示を置く明快なゾーニングで、導入から体験、余韻の消費へと流す回遊性を確保。会期運用を優先し、装飾や内装は後施工で調整可能な構成に見て取れる。
展示はヒマラヤの自然景観、仏教美術、音による体験を軸に編集され、シンギングボウルの共鳴や仏教関連の作品を手がかりに、ネパールの精神文化へ来場者を導く。日本との交流70周年にも触れ、文化外交の場としての役割を担う。締めくくりは飲食と物販で、国民食や茶文化へ接続し、観光誘致の文脈を強める構成だ。
ネパール館はタイプA(自前建設)を選択したが、2025年1月ごろから日本側施工会社への支払い遅延が発生し、工事が停止。会期開始後もしばらく未開館が続いた。6月16日に問題解消として作業が再開し、7月19日に一般公開。結果として、本万博で最後に開いたパビリオンとなった。


ネパール館は、大規模な造形や最新テクノロジーを有するパビリオンとは異なり、実体験と食文化を通じて国の輪郭を伝える「小さな総合館」。建築は象徴性を担保しつつ、運用性を優先した実装に落とし込まれている。トラブルを乗り越えての開館は、文化紹介と観光誘致を担う最低限の機能に資源を集中させた判断の結果であり、来場者はヒマラヤの風景と仏教文化、そして伝統楽器を奏でながら客引きを行う賑やかな飲食街によってネパールを等身大に感じ取ることができる。
作成者: Hiromitsu Morimoto