六甲の教会(風の教会)/安藤忠雄

Chapel on Mount Rokko 1986 / Tadao Ando Tadao Ando | gallery | Lecture Meeting
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兵庫県神戸市の六甲山の頂き近くに立てられた教会堂、通称・風の教会。
大阪府茨木市の光の教会、北海道の水の教会と合わせて、安藤忠雄氏の「教会三部作」のひとつに数えられている。
教会堂は宗教施設ではなく、旧六甲オリエンタルホテルの付属施設として建設された結婚式場となっているが、2007年のホテル閉鎖後は通常使用されることなく硬く扉を閉ざしている。

建物は礼拝堂と鐘楼、アプローチとなるすりガラスのコロネード、南面の自立壁で構成されている。
宗教施設ではない結婚式場としての依頼とはいえ、安藤氏自身は中世ロマネスクの教会堂建築がもった神聖な空間をつくり出すことを目的とし、装飾的要素を最小限にとどめ粗削りな石材で作り上げられたフランスのセナンク修道院などを参照して設計にあたった。
フランス・ゴルドにあるカトリック、シトー会のセナンク修道院
安藤氏にとって初の教会堂建築となるこの建物に用いられる素材も、コンクリートと石、ガラス、鉄に限定され、空間は光と闇の対比をテーマに構成されている。
光を透過するコロネードを通り鉄の扉を開けると、スリット窓から差し込むわずかな光しか届かない教会堂のエントランスが現れる。
このわずかな空間が風防室ならぬ光防室のような役割を果たし、その先に続く聖堂の豊かな光を強調している。
左: コルネードは礼拝堂入口付近で敷地の傾斜に合わせ段差を設けている。
右: コルネードから礼拝堂入口を見る
建物内部は、正面(西側)に鉄製の十字架が掲げられた聖壇があり、南側は壁面の二分の一を占める大開口となっている。
この開口部には柱と梁が逆十字に通っていて、光の教会で壁いっぱいに十字の切込みを入れ、そこから差し込む外光で光の十字架を演出したものとはちょうど逆に、玄昌石の敷かれた床に影の十字架を形成する仕掛けとなっている。
左: 六甲の教会 影により床に形成される十字架
右: 光の教会 スリットから注ぐ外光により現れる光の十字架
コンクリートに囲まれた屋内には静寂が響く
鉄のフレームに牛革の座面を持つ椅子は竣工当時から使われているもの

黒い球体は「六甲ミートアート2015」の参加アーティスト・八木良太氏によるインスタレーション
回廊は霧の通り道となり、礼拝堂のトップライト付近を中心に雨漏りも発生していて建物の状態はかなり悪い。
旧六甲オリエンタルホテルの営業が停止して以来、ホテル棟は廃墟のようになってしまっていて、教会堂もメンテナンスがままならず周囲を彩っていた緑の庭も手付かずになっている。
現在は年に10数回開催される六甲山の近代化産業遺産ツアーでの見学などでしか利用されていないが、今回撮影が可能となった「六甲ミートアート2015」のような広く公開されるイベントで有効活用される機会が増えることを期待したい。
PAGE INFO
公開日: 2015/11/3 撮影: 2015/10

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