ダイビル本館/日建設計 大林組

Daibiru 2013 / Nikken Sekkei Contemporary Architecture
+
大正期のオフィスビルを代表する歴史的建築物、ダイビル本館(1925/大正14年)の建て替えプロジェクト。
同ビルと北西広場(仮称)の竣工により、ダイビル・関西電力・関電不動産による「中之島3丁目共同開発」が完了する。

新しいダイビル本館は、低層部に旧ビルのファサードを再現し高層部は軽やかなガラスカーテンウォールの構成。
京阪中之島線「渡辺橋駅」や地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」と直結する利便性に加え、ビル専用非常発電機による無停電対応や5段階のセキュリティシステム、そして河川水を利用した冷暖房システムなど環境にも配慮した、高機能オフィスビルとしての設備を整えている。

隣接地には地下駐車場が設置され、上部には市民へのオープンスペースとして約3,300㎡の広場を開放。堂島川沿いの中之島遊歩道や、新美術館予定地などへのアクセスとして歩行者専用橋も設置される。


建物の北面と西面低層部には解体された旧ビルの外装が再構築され、全体が東側にスライドし規模も小さくなったが、壮観な姿が見事によみがえっている。
また、度重なる水害への対策として2009年の取り壊し時点ではふさがれていたアール窓や、正面道路のかさ上げにより失われた北西玄関(新しいビルではテナントの入り口となる模様)も再現され、旧ビル竣工時の装いにも近づける施工となった。
写真左:旧ダイビル本館と新館、右:新しいダイビル本館
全体を東にスライドし、空いたスペースは広場として開放されている。
正面玄関比較
エントランス部の大国貞蔵氏の彫刻や装飾の凝らされた円柱も見事に再生されており、ショーウィンドウ部分は中之島通りからテナントへ直接アクセス出来るようにアレンジされているが、元来の意匠を活かした格式高い仕上がりになっている。
旧ビルのホール
絢爛なエントランスホールも、床タイルなどの素材を再利用することで以前のイメージを再現するようなデザインが施されているようで、商業スペースのオープンが待ち遠しい。
外観は高層部をセットバックし、西面部分で高・低層部のラインをずらし、低層部北西角のアール部分を強調。
さらに上層部外装を隣接する中之島ダイビルと同化したような、この場所においては控えめなガラスカーテンウォールの箱とすることで、復元された低層部を独立した建物のように見せている。
新しくあらわれる外装を軽装で目立たないものにするファサード保存における定番の手法も、元々高層ビルに歴史的建築物が囲みこまれるような、なんとも言えない状況にあったこともあり、違和感なく受け入れることが出来た。

そして、ファサード保存の評価の分かれる最大のポイントとして、元の素材をどれだけ再利用し、補うべき新たな建材をうまく融合させ、以前の建物の意匠を損なうことなくいかに復元できるかが問われると考えるが、数ヶ月を掛け1枚ずつ剥がし洗いをかけた外壁の煉瓦をはじめ、装飾品や上部のコーニスなど、見る限りほぼ完全に復元されており、ファサード保存の技術力の高さと、旧ビルの建築的・歴史的価値に十分に敬意を払った施工であったことを感じることが出来る。
再利用された煉瓦と新たに作成された外壁
ライトアップされた正面玄関と周辺部

多くの装飾も見事によみがえっている
旧ダイビル本館は、設計監督の渡辺節氏をはじめ、村野藤吾氏や内藤多仲氏など後の建築史を代表する建築家が数多く携わった歴史的建築物であった。
建築技術の粋を結集し費用を惜しまず建設された建物を、テナントビルとしての収益性やコストの削減を命題にされる時代にファサードを復元して建て替えるということは、事業者にとって悩ましい課題であっただろうが、旧ビルの歴史を継承し、それが高付加価値となるような、多方面から求められる課題に見事に答えを出したものになったと感じた。

85年にわたりダイビルの旗艦ビルとして、事業者の原点としてこの地に在った建築に対しての思い入れの強さがうかがえた。
PAGE INFO
公開日: 2013/3/14 撮影: 2013/12 | 2013/3

作成者: